【Society】「弾薬工場の国有化検討」の話が新聞に載っていたので
過去、色々政治の話を書いたりもしていましたが、またたまには書こうかなって思い。過去は感情論的な話が多かったのですが、改めて今後はエビデンス視点に基づいた話を起点に「【Society】」という過去一個だけ書いていたカテゴリーに集約していこうと思います。
過去記事も見直して、同一カテゴリーになりそうなものはちょっと加筆していこうかなーって感じで。
「弾薬工場の国有化」ってなんの話??
そもそも、防衛省が使う弾薬って「どこでつくってるん?」って思うところがみなさんありますよね。僕も薄らぼんやり、「一部日本で作って、一部アメリカから買ってるんかいなー」ってクラの認識だったんです。
調べてみると、小銃弾・砲弾(従来型)に関しては概ね「設計も含めた国産」で、ミサイル・誘導弾(ハイテク系)例えば最新のパトリオット(PAC-3)とかは「設計アメリカで日本でライセンス生産」、12式地対艦誘導弾能力向上型の様な次世代兵器は国産開発に向けて産官共同で進めているって感じです。
報道でも出ましたが、この取り組みを略してGOCO(Government Owned, Contractor Operated)と呼んでいます。
その意味は文字通りで、「国有施設民間操業」での取り組みとなります。
正直、日本は戦後大きな戦争に巻き込まれることなく過ごしてきたこと、また武器の輸出に制限があるため(過去は「武器輸出三原則」で、今は「防衛装備移転三原則」で縛られています)必要な両島作ることができません。
そのため、利益があまり取れないこともあり軍需産業には企業としての旨みがなく企業もそれほど力点を置くことができません。
このため、「ハコ(建物)や設備は国が税金で用意するけれど、中身の製造や技術管理はプロである民間企業に任せる」と言うスタイルが、今回俎上に上がっているGOCOの取り組みになります。
字面だけだと勘違いしそうですが、工場が国有で、研究開発と製造が民間という責任分解です。
過去、日本の戦時中国営工場だと精度が低かったため民間が独自に戦闘機を作りとかいう話は皆さんも聞いたことがあるのではないかと思います。
この辺の話のハイブリッドですね、この話。
第2次世界大戦から80年。報道をみていても、もはや「アメリカが守ってくれる」は幻想になりつつある中現実的な解に向かって舵を切るということかなと思っています。
それって、右傾化の流れ??
この話は、右傾化とは切り離して考えるべきで「何かあった時にどうするのか?」のための備えとして理解しておくべき事項だと考えます。高市首相を推している人たちは、高市さんがこれを立ち上げたと勘違いしそうですが、全く関係ないです。
そもそもは、石破さんが防衛相時代から、「装備品の単価が高騰し、民間企業が耐えられなくなっている」ことや「有事の弾薬不足(継戦能力の欠如)」を誰よりも具体的に指摘してきたことが結構大きなトリガーで。
実際にGOCO方式を含む「防衛生産基盤強化法」が成立したのは岸田政権下(2023年)ですが、その理論的支柱を長年作り、現場の悲鳴を吸い上げていたのは、石破氏を中心とする佐藤正久さん、中谷元さん、岩屋毅さん、小野寺五典さんと言った自民党内の「国防族の実務派」たちです。
本質は、「このままでは物理的に作れなくなるから、国が下支えして自立しよう(専守防衛の維持)」という話であって「軍事力の誇示」が目的ではないことをきちんと理解すべきです。
そして、現場の話です。防衛産業は過去ある程度規模があったのですが、利益を考えた時に継続が難しく「コマツ(装甲車)」「三井E&S(艦艇)」「横浜ゴム(タイヤ)」という様な、名前を聞けば誰もが知る大手が「もうビジネスとして成り立たない」として事業を畳んで行きました。その数、実に100社以上。このままだと、本気でヤバい状況だったりします。
合わせて、2022年8月の麻生さんの発言「(自衛隊の弾薬は)2ヶ月もたない、2週間程度ではないか」を皮切りに論争になりましたが、名言は避けたものの「十分ではない」ことが国会答弁で明らかになり「安保3文書」の改定につながりました。
お分かりになると思いますが、ロシアがウクライナに進攻した際の弾薬不足の話がトリガーになっています。この話って、実際はかなり前から言われていた様に記憶していますが、リアリティが社会になかった感じで。ロシアが絡むことで、日本も「対岸の家事の話」ではないとなったのかなーと。この議論の結果として、「弾薬確保に5兆円」という予算案や、「GOCO(国有化)」を含む法律が2023年6月に成立しています。
岸田さんの時です。
さらに、もう一つ。
火薬の原料「精製綿(コットンリンター)」「硝酸」「硫酸」ですが、最初に書いた「精製綿(コットンリンター)」の実に9割が中国からの輸入で。。。この「精製綿(コットンリンター)」はそもそも中国が世界シェアの約5割を占めているという現実もあります。中国が同行という話ではなく、一国に頼り切っているということがリスクだし、「精製綿(コットンリンター)」からつくる「ニトロセルロース」の代替工程の基礎研究にも費用を持って対応する必要があると思っています。
そんなこんなで、「ひと、もの、かね」が必要なわけで、この儲からない投資を企業が負担しきれないため、国で持とうという現実解なんですよね。これ。
「国がやる」からこそのリスク——天下りと素人の介入
ということで、極めて理にかなった話ではあるのですが、国が絡む場合のリスクも多分にあります。それが「政治家の介入」と「天下り」です。
いずれも、大きな問題になりますが、特に前者の政治家の介入は過去でかめの事案として「FS-X問題」がありますので正直慎重にとは思っています。
日本の独立性を重視した石破さんから、対米従属を隠さない高市氏に首相が変わっているため同じ様な問題が起きかねないなと。
あの時は、せっかく技術向上のための完全国産を狙っていたにもかかわらず政治家の判断で見た目上の「共同開発」となり、結果として起こったのは「開発費の高騰と、結果としての配備数の激減」「炭素繊維複合材の日本技術の無償提供」「F-16の心臓部である「ソースコード(飛行制御プログラム)」の開示を米国が拒否」「ライセンス料の支払い」など意味不明なくらい不利な状況に。これは、対米従属系の為政者が決定を行うと当たり前の様に国益を害する例ですが、今はそれが起こるリスクがあるなと。特に、相手が相手ですから。
あとは、天下りの問題。よくある話で、官製プロジェクトに専門知識もない役に立たない人間が「論考賞」的にポストを与えられ居座る。このことが、結果としてプロジェクトを停滞させ、そして崩壊させる。
分かりやすいところで言うと『高速増殖炉「もんじゅ」』みたいな感じで。
あれは、本来専門知識や実務経験がある人間が率いるべきところを文科省や経産省の天下り官僚がトップや理事を務め、結果として「長期的な安全管理や技術的課題への理解」が全く進まず、事故後の隠蔽工作や、規制当局との意思疎通の不備が発生し結果として一兆円以上の税金が無駄になりました。
民間が入ればいいと言うわけではないのは「クールジャパン機構」の失敗事例が顕著なので、「特異点とニーズをきちんと分解し、明文化した上で実行計画のための要件定義ができる俯瞰的視点と知識と知見をもった戦略プランナー」を据えられるのかが成功するか否かを決める鍵になるかと思います。
本来の国防は兵器だけではなく兵站も考えるべき
さて、ここまで物理兵器の話をしてきましたが、国防を語るにあたっては「兵站」は忘れてはならない要素かと思います。第2次世界大戦で亡くなった旧日本軍の戦死者の約6割は、実は戦闘ではなく『餓死』だったと言われています。 2026年の今、私たちはミサイルの予算(5兆円)については議論しますが、自分たちの『胃袋』を守る予算(一次産業への投資)には無頓着です。というか、「米が高くなった!」と大騒ぎするばかりですよね?なんか、マスコミ総動員で犯人探しとかしてるし。
本来、そう言う話ではないんですよね、これ。

この資料は、農林水産省 農産局の「米をめぐる関係資料」からの抜粋です。
見てもらうとわかりますが、平成2年(1990年)ごろは60kgの価格が22,000円程度だったものが、ここ15年くらいは12,000〜15,000円くらいに低迷していました。
で、生産にいくらかかるのかと言うのが次のグラフ。「令和4年産米の10a当たり資本利子・地代全額算入生産費(以下「全算入生産費」という。)は12万8,932円で、前年産に比べ0.6%増加し、60kg当たり全算入生産費は1万5,273円で、前年産に比べ3.5%増加した。」と書いてある通りで。。。
令和4年の60kgの販売価格が、13,844円なので完全に赤字です。
持ち出し、1,429円/60kg。
異常ですよね、これ。

実際の話、ずっと赤字だけど使命感のみで続けてきた人たちが日本の食を支え、そして耐えきれなかった方達が離農し続けていると言うのが現状。時給で換算すると、500円以下になる感じなんですよね。。。
我々が関わるマーケティングやビジネスの世界で、『15,273円で作ったものを、13,844円で売れ。差額は自分で被れ』と言われて、誰がその事業を続けますか?誰もやらないですよね。
何が問題かと言うと、本来どの様な事業も「規模」を持ってスケールメリットで利鞘を稼ぐものなんですが「減反政策」を押し付けられることで「規模」を追えなくなったことが大きなトリガーになっていて。その上、国家が「国民に安く米を食べさせること」を最優先し、その裏で「農家の生産コスト(肥料・燃料・人件費)」が上がっている現実を黙殺し続けたこと。
そして、トドメが本来製品というのは関係コストを弾いた上で売値を決めるものですが「相対取引(農協や卸との力関係)」で決まるため、農家はコストを価格に反映させる権利を奪われていたんですよね。
それもこれも、結局は農水省の政策の失敗だと考えます。
そういえば、食料自給率って全体でもなかなか酷いことになっていて。
・1960年度(約60年前):79%
・1990年度(約30年前):48%
・2010年度(約15年前):39%
・2023年度(最新):38%
当該数字は、農水省の「食料自給率・食料自給力指標について」の資料からの抜粋。
こんな感じで、ダダ下がりです。
ちなみに、1990年に一気に下がっているのは食生活の変化。
小麦粉を使ったパンやパスタに食が移行した結果です。
ここで起きた現象を示しているとも言えるのが次の表。
これは、農水省が公開している2021年の「諸外国の品目別自給率(重量ベース)」ですが小麦への傾注が起きた結果穀物ベースの自給率ですら、30%前後という。
なかなか、恐ろしい数字であるという現実を、知っといた方がいいかなと思います。

国防をいうのであれば、国防の肝である「食料」についてももう少しきちんと議論しておくべきだし、霞ヶ関は自らの失敗を猛省し、現実を直視した上で「いかに生き残るか」について真剣に議論すべきだと思います。弾薬庫に予算をつけると同時に、食糧庫にも予算をつけること。これができて、本当の国防だと思います。
これ、マジで昭和にかけられた呪いだと思いますし、もう令和なのでこの呪いは払うべき時が来ているんですよね。手遅れに近いけど。。。。
というわけで、今回の締め
いろいろ書き連ねましたが、世界情勢が混沌としている中「今までこうしてきた」はもう通用しないフェーズに入ってきていて、見直すべきところは見直していかないとなかなか大変なことになるなと。そういう話です。
もはや「アメリカが守ってくれる」という「都合のいい神話」は、キッシンジャー文書見れば「日本が独自の巨大な軍事力(核武装を含む)を持つことを阻止し、軍国主義が復活するのを防ぐため。」であったことはもうわかっているし、それだけにいかに自力本願を達成するのかが、これから考えるべきことなんですよね。
なんとなく、このリアルがわかってない人たちも多いよなーと思って、エビデンスに基づく記事を書いてみた感じです。
今後も、ちょこちょこ事実を紐解いた記事を書いていこうかなーって思っています。
